映画『南風(なんぷう)』合同取材

 

Q 日台合作でしたが、合作の作品に参加してみていかがでしたか?

 

黒川芽以(以下、黒川):合作ではありますが、日本人の役者が少なかったので、私の中では台湾で撮影をしているというイメージの方が強かったですね。初めての海外での撮影でしたがすごく貴重な体験だったと思います。今回、初めて台湾に行ったのですが、親日家の方がこんなに多いとは思わなかったです。すごく優しくて、本当に安心して外にも出られましたし。全員がそうかは分からないですけど、みんなマイペースでほがらかな方が多いから、東京でセカセカしている自分にしてみたらすごく新鮮でした。

 

テレサ・チー(以下、テレサ):私は撮影が始まる前は、日本人はすごく真面目だって聞いていたので緊張してました。失敗したらどうしようという気持ちがすごくありました。でも実際に撮影が始まってみると、やはり日本人のキャストの方もスタッフの方もすごく仕事中は真面目ですが、でも一旦カメラが止まるとすごく楽しくてすごくユーモラスだし、とても良い雰囲気で楽しい現場でした。

 

コウ・ガ(以下、コウ):今回は合作と言っても、スタッフのほとんどは日本人でした。みんなの言うように、日本人の方というのはすごく真面目に仕事をされるし、仕事のやり方が違っていました。そういう国際的な現場というのは自分にとってすごく有意義だったと思います。いつもと雰囲気の違う現場に入って、色んな面で勉強ができたのですごく良かったです。

 

Q サイクリンロードムービーということで、自転車での撮影で苦労された点などありましたか?

 

コウ僕は普段から自転車に乗るので、サイクリング自体は割とリラックスして取り組めたのですが、難しかったのは3人で走る時の距離の取り方です。カメラがどう撮影しているのか、あんまり3人が離れてもいけないし、くっつきすぎてもいけないし、そのあたりにすごく気を遣いました。あとは、撮影が夏だったのでとにかく暑かったです。すごく暑くて体力的にはきつかったです。それから、クランクイン前は一生懸命トレーニングに励んでいましたね。

 

黒川そうなんだー!?知らなかった!

 

コウそうそう()。これまでの僕とは違う僕を見せないといけなかったから、頑張りました。やっぱり撮影の時が一番ガッシリとしてましたけど、あんまり今も変わってないですね。体重は維持してます。

 

黒川大丈夫、まだ健在だよ()

 

テレサ私もやっぱり一番キツかったのは、暑かったことですね。でもサイクリングをしながら、どんどん移動をするのでそれがすごく楽しかったですね。あと撮影の現場は、まるでピクニックをしているみたいでした。撮影が終わった夜も、まだそのピクニックが続いているような感じでした。すごく面白かったし、映画を撮っているというよりはドキュメンタリーを撮っている感じでした。なんか、私たちが遊んでいるところをたまたまカメラが撮影しているような雰囲気でした。

 

黒川私は、以前にずっと車イスに乗っている役をやったことがあるんですけど、その時も、普段の状態でお芝居をするのと動きがやっぱり変わって、乗り物自体にも魂が宿っちゃうというか、全体で見たときに感情が見えてきちゃうので、そこもすごく、コウ・ガさんが言っていたように“距離”で人間関係ができたりもするので、やっぱりそこが難しくもあり面白くもありましたね。でも、元々乗り物は好きだったのですごく楽しかったですね。毎日寝不足だったし苦しかったんだけど、逆に自転車で旅をするのは私もドキュメンタリーみたいだったので、その自転車に乗りながら台湾の景色を観て、撮影されながらも癒されていました。

 

Q 旅の初日に、藍子がホテルで筋肉痛で辛そうにしてましたが、あれはリアルでした?

 

黒川そうですね。今回は割と順撮りだったんですよ。本当に旅のルートの通りに2週間強くらいで撮影したんです。なので最初は本当にママチャリから始まってるんです。あのママチャリが本当にボロくって()。しかも最初トントンと競り合うんですよ、あのシーンをママチャリで漕いだらものすごく脚が痛くなって、本当にお尻から痛くなる感じでした。あとトントンより藍子は年上なので、ちょっとおばさんっぽく見える痛がり方を意識したんですよ()

テレサ、コウ (爆笑)

 

Q それぞれの役柄に対して、どのように感じられて取り組まれましたか?

 

テレサ私の役は16歳で、その純粋さをどう出すかが課題でした。私はもう20歳をすぎてますから、トントン役を頂いた時に、近くの高校へ行って女子高生を観察したんです。どういう風にノートをとるのか、など女子高生の色んな実態をこっそり見ていました()。あとは、私の16歳の時の感覚はどんなだったかなーというのを思い出していました。例えば藍子とユウに会ったとき、16歳の女の子だったらどんな反応をするだろうと思い出しながら演じていました。トントンは、とてもピュアで単純でちょっと馬鹿っぽいところもある女の子だと思います。だって、いきなりお店で知り合った人のガイドになりますって言ってしまうわけでしょう?本当に怖いもの知らずですよね()。あと、「一緒にご飯食べない?」って旅の道中で知らない人に誘われても「行きます」って言っちゃう。でも、藍子と一緒だから危険な目に遭わずに旅を続けられたっていうことだと思うんですよね。最初は藍子とうまくいかないところもあったけども、だんだん姉妹のように仲良くなっていく。だからトントンって、本当に典型的な女子高生だと思います。

 

黒川でもテレサは普段から、日本人から見ても声のトーンも高いし、ずっと現場でも笑顔だったので、顔はすごく大人っぽいけど雰囲気がすごく若く見えるなと思いました。嫌って思うかもしれないけど()

 

テレサ小さい頃から私、トントンみたいに高音でわーって喋るんですよ()

 

黒川そうなんだ!台湾の若い女の子で喋ったのはテレサくらいだから、これが標準だと思ってた()

 

コウ僕が初めてテレサに会ったときは、お互い16歳でした。その後もいくつか共演したんですけど、『南風』の前はしばらくやっていませんでした。僕が初めて会った16歳のテレサを思うと、すごく恥ずかしがり屋で、気が小さくて怯えている感じがしてました。トントンって全然違うじゃないですか。でもそのトントン役をテレサは見事に演じてたと思います。

 

Qユウ役はどのように演じたのですか?

 

コウユウの役作りにおいては、2つ頑張らないといけない点がありました。1つは、日台ハーフという設定です。純粋な台湾人ではないわけですよね。日本の文化も背負っているので、そのあたりを雰囲気的にどう出すか。2つ目は先程も言ったように体型です。プロのサイクリストを目指すという役の設定だったので。今回のユウの役は、セリフは少ないものの、かなりドラマを前に進めていく原動力になっていると僕は思っています。藍子もトントンも夢を持っていて、その夢に向かって走っていきます。だから3人共が刺激をし合って進んでいく。ユウ役については監督とも事前によく話しました。ユウは何かにつけて物事を決められないんですけど、でも藍子に出会うことによって変わっていくんです。藍子はずっと自分の悩みを抱えている、色々と人生につまづいているんですよね。その藍子の気持ちをユウは自分の内面に反映させて、そして自分も変えていこうとする。だから藍子との出会いはユウにとってすごく大事だったんです。

 

黒川私は、テレサとコウ・ガさんが元々仲良かったこともあって、日本人1人で台湾の現場に入った感じだったので、この撮影を通しながら本当に旅をして、本当に片言の英語とジェスチャーで2人とコミュニケーションをとって、それが全部、藍子を演じることに繋がっていました。疲れた時は本当に疲れた表情をしていたり、少しだけ時間があった時は夜1人で台湾の街をブラブラ歩いて、その時に「藍子もこうして歩いたんだろうな」って思ったり。自然に環境がもうそうなっていって。場所と人の感情、空気を感じて演じましたね。

 

Q 台湾での撮影、日本と違ってここが大変だったという点はありましたか?

 

黒川とにかく中国語と日本語でのやり取りなので、脚本に意味はあるものの、現場では“音”で認識するしかないんですよね。で、こちらが脚本通りにやっているのに、結構テレサちゃんがアドリブを入れてきて()。「あれ?知らない音が入ってきたぞ」という感じで()。でも、それが逆によりリアル感を増す要素になったと思います。台本にはないけど、テレサちゃん日本語好きだからたまに言ってるんですよ。「おばさん」以外は、台本では中国語なのに、本番で急に日本語で言いだすんですよ()。私も仕事ではある程度プライドがあるから、テレサちゃんにアドリブされたら絶対そこに乗っかっちゃうんですよ()。テレサちゃんすごいなって思って、彼女だからこうできたんですよね。

 

テレサ1つ思い出したんですが、日月潭のパーティのシーンで藍子とトントンが料理を取りあうシーンで、アドリブで藍子をお尻で突き飛ばしたりしましたね()

 

黒川そう!そういうのをちょいちょい入れてくるんですよ、本番で()

 

テレサでもそれは、アドリブでもお互いにやれるなって分かってたからそういうのをやってたんですよ。

 

黒川分かる、私も結構アドリブ好きだから。

 

Q この映画を、観客にはどう見てもらいたいですか?

 

黒川台湾の名所的なところをまわっているので、台湾の美しさを感じてもらえると思いますし、台湾に興味のある方も最近増えているので、そういう方に見てもらえると嬉しいですね。あと、ここまで自転車に特化した映画は少ないと思うので、サイクリングや自転車好きの方にも楽しんでもらえるし、20代後半の藍子の揺れ動く様を丁寧に演じたつもりなので、そこは見てほしいですね。あとは単純に、本当にドキュメンタリーのような作品なので、ロードムービーで一緒に旅をしているようにぜひ観てほしいなと思います。

 

テレサこの映画に出ている人は、みんな夢を追いかけてるんだけど、何かしらちょっと足りない人たちなんですよね。だからその夢を叶えるために頑張っている姿を感じてほしいし、夢はあるけど少しだけ自分を信じられないような人にも見てほしい、そういう力を与えられる映画だと思います。この映画を通じて人と人との通い合い、言葉が通じなくても繋がることはできるということを、私はみんなに見てほしいと思います。

 

コウこの映画はすごくきれいな風景がいっぱい出てきますので、その風景と美味しそうな食べ物と、そして人情味のあるところを感じてもらえると思います。あとは僕ら3人が頑張って勇気を持って夢を叶えようとする姿、みんなが出会うことによって成長していく姿を感じとって頂けると思います。

 

出演:黒川芽以、テレサ・チー、郭智博、コウ・ガ  監督: 萩生田宏治/エグゼクティブプロデューサー:大和田廣樹、ワン・シーション

ゼネラルプロデューサー: 狩野善則/プロデューサー:朱永菁 /共同プロデューサー:ハン・ジェンユー

脚本: 荻田美加 /攝影師: 長田勇市JSC/音楽:主題歌「SUMMER BOOK」赤い靴 /共同企画: ©森永あい/白泉社(メロディ)

企画: ドリームキッド、ブレス /製作: ドリームキッド、好好看國際影藝 /配給: ビターズ・エンド  www.nanpu-taiwan.com

後援: 台北駐日経済文化代表処、愛媛県、台湾観光局、公益財団法人日本サイクリング協会、JTBピクチャーズ  

2014/日本・台湾/93/デジタル/11.85

 

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