東京国際映画祭カンボジア作品『天女伝説プー・チュク・ソー 』、『怪奇ヘビ男 』のティ・リム・クゥン監督 単独インタビュー

27日(土)、東京国際映画祭ディスカバー~亜州電影~伝説のホラー&ファンタ王国カンボジア作品『天女伝説プー・チュク・ソー 』、『怪奇ヘビ男 』のティ・リム・クゥン監督の単独インタビューをさせていただきました。

 

ティ・リム・クゥン監督

カンボジアの映画史における伝説的存在であり“クメール映画の父”と呼ばれる。初監督作“Goodbye Duong Dara”1964年にカンボジア映画祭で最優秀監督賞を受賞し、シアヌーク国王より同賞を授与された。『怪奇ヘビ男』は73年にシンガポールで開催されたアセアン映画祭で最優秀監督賞を受賞し、“The Snake Man Part 2”74年に台北で開催された同映画祭で賞を受賞している。クメール・ルージュによる大量虐殺の生き延び、自作フィルムの存在を長く秘密にしてきた。

天女伝説プー・チュク・ソー

地上に舞い降りた天女と純朴な農夫の青年が苦難を乗り越えて愛を育むが…。

お転婆な天女の4姉妹が地上へおりて遊んでいると、ふとした きっかけで末っ子のプー・チュク・ソーだけがそのまま地上で7年間を過ごさねばならなくなってしまう。彼女は若い純朴な農夫ソンヴァットの家で働くことに なり、やがてふたりは惹かれあうようになる。しかし悪徳地主のセテイがふたりの仲に横やりを入れ…。“クメール映画の父”と称されるティ・リム・クゥン監 督が手掛けたフェアリー・テールの代表作。日本の羽衣伝説などとも響き合うストーリーが興味深い。ヒロインのディ・サヴェット、農夫役のチア・ユットゥン はともに当時のトップスター。

 

怪奇ヘビ男

カンボジアでは誰もが知っているホラー黄金期の代表作。恐怖の展開に戦慄せよ!

夫のいる女性が大蛇と関係して身ごもるが、嫉妬に狂った夫 によって剣で腹を切り裂かれ、あふれ出た大量のヘビも皆殺しにされる。しかし1匹のヘビが生存していた。やがて成長したヘビはハンサムな青年に変身して人 間の社会に入り、美しい娘ソリーヤーと恋に落ちる。ところがソリーヤーの意地悪な継母が、娘の幸せを壊そうとして策略を練るのであった…。東南アジア全域 で最もよく知られたカンボジア・ホラー黄金期の代表作。本作もまたソリーヤー役のディ・サヴェットと、ヘビ男役のチア・ユットゥンのトップスター共演作で ある。翌71年には続編が作られている。

Q:『天女伝説プー・チュク・ソー 』、『怪奇ヘビ男 』は、ホラー作品になっておりますけれど、ホラー作品を作ろうと思ったきっかけを教えて下さい?

 

ティ・リム・クゥン監督:「ホラーというよりもお化けが出てくるシーンは、最後の方に出てきます。全体としてはお化けが出てくるという恐い話というよりは、人の生活ということを描きたかったので、その人々の生活の中にお化けの部分もあり、笑いもあり哀しい部分もありという作品にしたつもりです。恐い部分だけというお話を作ったつもりはないのです」

 

記者:恐いという感じよりも、笑いありで楽しめた作品だと思いました。

 

監督:「最後のシーンでは、女の人の首を絞めたり子供を捕まえようとしたり、恐しい部分も少しはありましたが、そこだけを強調して怖いものを作るという気はなくて、人々の生活を題材にしたかったのです。アメリカ映画であるようなドラキュラが出てくるとか血を吸うとか、そういう意味では怖いものを作るつもりはなかったのです」

 

Q:男女の恋愛的な話でもあり、そうかと思えば蛇と女性の関係があったりしましたが?

 

監督:「『怪奇ヘビ男 』の最初の20分は民話なのですよ。そこの部分は教科書にも載っている話なので、変えるわけにはいかないので、そこから後の部分を自分のオリジナルで考えて作っていきました」

 

記者:民話とおっしゃいましたが、私もカンボジアに旅した時に添乗員の方から『怪奇ヘビ男 』の民話の話を聞いたので、今回、東京国際映画祭で上映されることを、楽しみに待っていた一人でもあります。

 

監督:「ありがとうございます」

Q:ポル・ポト政権以前に製作された作品ですが、当時撮影するうえで大変だったことはありましたか?

 

監督:「良い作品を作って多くの人に観てもらうことだけを考えて、大変だったと思ったことはありません」


 

Q:自作のフィルムの存在を秘密にされていましたが、そのフィルムの存在を公開しようと思った理由は?

 

監督:「フィルムを(カナダ在住のため)カナダに持って行き、光が当たることと映写機でフィルムが擦れることで、フィルムが傷むことが怖くて、ずっと公開せずに持っていました。今年に入って公開することにしたのです。東京国際映画祭の前に、ベルリン映画祭でも映画関係者が「映画祭で上映しないか?」と声をかけてきて自分としてもカンボジアの映画60、70年代に、こんなすばらしいものを作れていたんだというのを、多くの世界中の人々に知って欲しいと思ったのです。カンボジア映画って、そんなに大したことが出来ていないだろうというふうに思われているんじゃないかなということもあり、このような作品があったのですよというところを観て欲しくなったのです」


Q:カンボジアの映画業界は、これからどのようになって欲しいと思われますか?

 

監督:「自分はもう年なので、自分が何かをしたいというよりも、若い世代に60、70年代にカンボジアの映画の分野が発展したように、良い作品をどんどん作ってもらえるようになりたい。そして、芸術としての国際レベルの映画を作って、カンボジアの作品として世に出せるように欲しいと願っています」


 

Q:最後に、来日されてハードなスケジュールをこなされていると思いますが、どちらか観光などのお時間はありそうですか?

 

監督:「行きたいところはいろいろありますが、1960年頃に来日した時に京都に行きました。山の上にホテルがあり、紅葉がきれいで8ミリビデオで撮ったのです。すごく景色のきれいなところで着物を着て凄く楽しかったです。そして歌舞伎や日本舞踊は(当時は)撮らしてもらえなかったのですよ。あれが凄く懐かしくて・・・。今度は仕事でない時に来たいと思います(笑)」

東京国際映画祭 ホームページ http://2012.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=121

 

上映日時

10/28 11:30『天女伝説プー・チュク・ソー 』

10/28 14:35~『怪奇ヘビ男 』


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