東京国際映画祭日本映画・ある視点部門作品『愛のゆくえ(仮)』の木村文洋監督 単独インタビュー

22日(月)、東京国際映画祭日本映画・ある視点部門作品『愛のゆくえ(仮)』の木村文洋監督に、アジアエンタメLIFEでは単独インタビューをさせていただきました。

 

この『愛のゆくえ』は、1995年に起きたオウム真理教による「地下鉄サリン事件」は、世界を震撼させた。その後も国内外では様々な事件・事故が続き、新たな世紀は混迷を極めた10年を終えた。そして2011年。東日本大震災と福島第一原子力発電所事故が起こった年の最後の日、全国指名手配容疑者で元オウム真理教の幹部・平田信は出頭した。共に逃亡を続けた女性との生活は17年に渡った。彼を匿うために積み上げられた嘘。その嘘の集積でできあがった部屋=世界には逃亡犯である彼の現実を超えた2人の生活があったのではないだろうか。自分とは全く違う人間だと思っていた2人の日常をモチーフに、私たちの17年間をも思い起こさせる限りある時間の愛の物語。(※クリックで画像拡大)

 

Q:『愛のゆくえ(仮)』を作ろうと思ったきっかけは?

 

木村監督:「昨年の12月31日に、平田信が出頭した一ヵ月後に、前川麻子(女優/脚本)さんが」脚本になれて・・・最初は演劇にする予定でしたが、プロデューサーが映画にしたいということで、私(木村監督)にオファーがきたのです。17年間平田を追いかけていたのではありません。調べたのですけれど、”東日本大震災で不条理なことを見て、情けなくなった”ということでした。それが本当かどうかはわかりませんが・・・いろんな説があると思うのです。最初は信じられなくて、17年前に事件に関与して、逃げてきたにもかかわらず、そういったこと(震災)で(逃げ続けてきた気持ちが)崩れるものなのかとも思いました。(平田のいっている)理由とは、一般の私達の立場と同じような理由のような気がしました。最後まで映画にしようか悩みました。平田と17年間支えてきた女性との部屋をどのようにしたかったか・・・考えることは昨年一年間、私達が(震災を気にかけて)すごして来たことにも繋がるかもしれませんし、今年の春に(震災から一年後に)作品を作らなければと思ったのです」

 

記者:脚本を書いた前川さんが、昨年大晦日以降に脚本を書き上げたのですね。この作品を作る上で裁判の傍聴や平田サイドの取材などはされたのでしょうか?

 

監督:「裁判の傍聴は聞いていませんが、報道資料などを集め、調べて脚本を書き上げました」


 

Q:前川さんなどキャストを決めたのは、どういう理由から決めたのでしょうか?

 

監督:「出演者は2人しかいませんので・・・二人(前川麻子・寺十吾)は今年演劇で共演することが決まっていましたこともあり・・・ 寺十吾さんの顔を拝見したときに、凄くひきつけられるものを感じたのです。寺十吾さんの演技を見たことはないのですが、この二人(前川麻子と寺十吾)」を撮ってみたいと思ったのです。寺十吾さんと平田が同じ年齢ということもあり、出演をお願いしました」


記者:実は、私の知人もオウムに入ってしまい、未だに行方がわからないこともあり・・・偶然なのですがサリン事件の時も・・・私は通常であればあの時刻の地下鉄に乗っていたはずでしたが、海外出張でニュージーランドへ渡航していたため、事件をニュージーランドのニュースで知ったので・・・この『愛のゆくえ(仮)』の監督のインタビューをしたいと思っていたのです。今回の作品『愛のゆくえ(仮)』は、事件というよりは愛情物語(メロドラマ)に仕上がっていると思うので、若干観る方の立場によっても、観方や考え方が変わってくると思うのですよね。

 

Q:愛情や心情が描かれていると思うのですが、撮影で苦労した点などはありましたか?

 

監督:「苦労は・・・結構あったな・・・(笑)撮影現場は密室でしたので、カメラ位置などではカメラマンが一番苦労していましたね。キャストの二人は、役者であり脚本家でもあり大先輩ですので・・・(苦笑い)私の解釈に対しても即時に返事が返ってきましたので、その点では助かりましたね(笑)苦労といえば・・・撮影は3日間でしたので、初日は自分の演出の力量に、役者を閉じ込めてしまったかな・・・これは何とかしないとと思いました。それで2日目からは、いろんな話をして撮影に挑みました。映画の後半になるにつれて、17年間一緒にいたという場面が、ばねを巻くように撮れたシーンは、是非見ていただきたいと思います」

 

Q:挿入歌でアン・ルイスさんが歌っていた「グッド・バイ・マイ・ラブ」を選択した意図は?

 

監督:「実は、私はあの曲を知らなかったのです。カメラマンが私より10歳年上で、歌詞をきかせていただいたら、映画のままの歌詞だ!ということになり・・・とても簡単な歌詞なのですが、その歌詞が映画にピッタリはまったのです。深く哀しいことを歌っているなと思ったのが、挿入歌にした理由です。現代風に太陽肛門スパパーンというバンドにお願いしました」

 

Q:この『愛のゆくえ(仮)』は愛情を描いていますが、監督の恋愛などがヒントになっているシーンなどもあるのでしょうか?

 

監督:「(真っ赤に赤面されて)どういう恋愛シーンを撮りたいとかはありませんでしたね。例えば、自分と同じような部屋の間取りで、どのように生きてきたのかとか・・・そちらを撮りたかったですね(ホッとした様子の場面も)」

 

Q12月1日に公開される予定でしたね?

 

監督:「東京の他には、大阪で上映されます。青森(監督の出身地)でも上映したいと思います」

 

 

Q:次回作の予定などは?

 

監督:「前作『へばの』で六ヶ所村に家族と別れて残った父娘の話でしたが、その彼らを六ヶ所村においてきた母息子が東京で避難してから、どのように生きてきたかというストーリーの作品を考えています。あとは12月1日からの『愛のゆくえ(仮)』の公開が予定されています!」

 

演劇的なセリフを映像にしたこと、何よりも木村監督の誠実さが表現されている味のあるメロドラマ。東京国際映画祭での上映は、当日券も完売される反響だった。

 

公式ホームページ http://teamjudas.lomo.jp/aikari.html


 

 

(取材:野地 理絵)

 

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