市川猿之助さん 合同インタビュー

明治座創業140年記念「十一月花形歌舞伎」で、襲名後、明治座の舞台に初登場される市川猿之助さんに、合同インタビューをさせていただきました。

 

Q、襲名後、初の東京公演で「天竺徳兵衛新噺」を選んだのは?

 

A、博多座で2月にやらせていただき、非常にうまくまとまったのと、明治座は今は歌舞伎があまり浸透していないので、定着させる為にもコンパクトなものが良いという意味で選びました。猿翁さんの時よりすごく短くしましたよ。最後の踊りをなくし、1時間ぐらい短くなりました。初演は5時間30分以上かかっています。短くしても重要な所、蝦蟇や小平次など、お約束のところは全部入っています。でももっと短くしたいくらい。個人的には「お芝居みてご飯を食べて」というのが一番良いと思っているので。明治座は劇場の中では一番お弁当が美味しいと評判ですよ。「亀博」でも展示した巨大なガマはお気に入りです。もっと大きくしたいくらいです。 

(写真提供:明治座) 【スタイリスト 勝見宜人】

 

Q:現代演劇と伝統演劇の日本演劇界全体での構想などがありましたら?

 

A,現代劇の役者と共演することは、面白いことだと思います。

 

 

Q、昨年、明治座に出演されて、スペクタクルな演出がありましたけれど、明治座の設備などについて、いかがでしたか?

 

A、前回公演は「四ノ切」だったので少ししか劇場にいなかったけど、楽屋も広くて設備も新しいので安心です。明治座は宙乗りのワイヤーが見えないようになっているんです。鳥屋も天井から降りてきてまた収納される。猿之助の宙乗りの為に造ってくれたようなものだったんですけど、劇場が新装になってから猿翁さんは出演していないんです。

 

(写真提供:明治座)

 

Q:舞台、芸術全般に興味があるけれど、歌舞伎はまだ足を踏み入れていないという方々や、観てみようかなという方に、こういうところを観たら楽しめそうというところは?

 

A,それはあえて言わないようにしています。人それぞれ違いますし、”ここが見どころです”と言われても、よほど興味がないと観に行こうとも思わないですし、じゃあどのようにしたら観に行こうとなるのかなと思ったら、”これなんだろう?”と、自分で調べて面白そうだったら観に行くと思うんですよね。興味があることは、自分で調べるものですよ。あまり努力をせずに観たものは記憶に残らないと思います。例えば「天竺徳兵衛新噺」で「天竺」が気になったら天竺を調べますよね。そうするとインドのこと・・・となり、何だろうと思うものです。歌舞伎でインドか?みたいなね。そういうことだと思いますね。今は簡単に調べられますし、それもひとつの演劇を楽しむ方法だと思います。脚注の多い本ってつまらないのと同じで、「とにかく、何か面白いからおいで!」と・・・。夫婦愛とか言われても、夫婦愛を感じたことがない場合、親近感がない人は(チケットを)買うまで踏み切れないしね。いろんな楽しみ方があり、世代にもよるものですから、もしかしたら、面白くないと思う人もいるかもしれない。でも、それはそれでいていいんだもの。そういう観方もあると・・・。宙乗りするとみなさん喜んでくれるし、そういう理屈じゃなく楽しめる瞬間はありますしね。演劇は書面とかではわからない。とにかく観てみて!

 

Q:楽しみ方については観る方の好きなようにということですが、猿之助さんご自身がやってらっしゃって「天竺」の面白いところは?

 

A:やっている方はお客さんが思っているほど面白くないのですよ。早替りはお客さんは楽しいかもしれないけれど・・・。役者としては、こってりとした例えば「寺小屋」の「いろは送り」をやったりとか・・・そっちの方が役者としては面白いのですよ。宙乗りとか吊られたりスペクタルなものは運動と一緒ですから、体力的快感とか、出てきた瞬間わっとすることはあるかもしれないですが、演劇的感動とはまた違うものですからね。「蜘蛛~」では運動会しているみたい。

 

(写真提供:明治座)

 

Q:猿之助さんにとってカタルシスを感じる時は?

 

A、それは、やり終わったときね。今日も一日終わったというときに、次はもっとこうしたいなとか、再演してみたいなという気持ちになっていく。

 

 

Q:博多から今回の「天竺」については、どこか博多のときに課題に残っていることはありますか?

 

A、個人的気持ちとしては、より短くしたいと思います。よりコンパクトにやっていきたいなと・・・希望だけはね。

 

 

Q:「三代猿之助 四十八撰」もやりたいと、昨年おっしゃっていましたが?

 

A、良い作品はやりたいですね。(これから手がけたい作品は)何作品かはあります。

 

 

 

Q:早替りなど運動会みたいだとおっしゃっていましたけれど、11月はお休みなしで、昼夜公演ですが、体力作りとか普段心がけていることはありますか?

 

A,これ(舞台)が体力作りですからね。ある意味、役者はアスリートだと思うのですよ。

 

 

Q:休みは何をしていますか?

 

A,(マッサージとか)メンテナンスですね。病院に行ったり・・・。健康に長生きして後輩とかが活躍しているところを見たいものね。

 

Q:最後に、日本の演劇が世界と拮抗するには?

 

A、卑屈な心を捨てること。無理に世界へ出なきゃと思わないこと。日本も世界の一部なのだから、日本でやることが、世界で活躍していること。日本も立派な世界の内のひとつだから、日本で活躍していれば、世界で活躍していることになるんだよ。日本の演劇は充分、世界と拮抗していると思いますよ!

 

 

(取材:野地 理絵)

 

明治座創業140年記念「十一月花形歌舞伎」

 

開催日:21012年11月3日(土)~27日(火)

 

開演時間

昼の部 : 11:00

夜の部 : 16:30

 

上演時間

昼の部 4時間30分 休憩2回を含む

夜の部 3時間45分 休憩2回を含む

 

チケット料金(税込)

一等席(1階席、2階正面)12,000円二等席(2階左右12列)8,000円三等A席(2階左右34列、3階正面)5,000円三等B席(3階左右)3,000

【学割】各席種2割引

 

1020日(土)10:00より学割予約開始

※学割は、明治座チケットセンター並び明治座窓口のみのお取扱いとなります。

 

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