映画『トガニ 幼き瞳の告発』試写会&シンポジウム ファン・ドンヒョク監督×放送作家鈴木おさむ氏登壇!

8月4日に公開される映画『トガニ 幼き瞳の告発』の試写会&シンポジウムが、24日(火)に都内で行われ、ファン・ドンヒョク監督と放送作家鈴木おさむ氏、パク・インドン弁護士が登壇した。

 

『トガニ 幼き瞳の告発』は、昨年9月に韓国で公開されるや多くの人々に衝撃を与え460万人以上もの観客を動員(韓国の大統領までもが鑑賞した)、その影響で再調査し、実際の学校は廃校となり、先日7月5日には、実際の事件の加害者に実刑判決が下った。法律が新たに改正し、改正案は”トガニ法”と言われるようになり、ひとつの社会現象を巻き起こした。まさに映画、そして表現の力が国家をも動かしたセンセーショナルな話題作。(※クリックで画像拡大)

 

鈴木:試写会を観た後に衝撃を受けた。観てこんなにも怒りの涙がこみ上げてくる涙をみたのは、僕自身は初めてでした。(韓国で)公開された後のことを、パンフレットで知り、映画の力・映画のパワーを強烈に感じ、この映画を本当にショッキングな内容ですけれど、一人でも多くの人に観て広げて欲しいと思います。

 

鈴木:事実を基にした映画がたくさん作られていますが、なぜこのような事実を基に作り、世の中の人に知らしめるという映画を作った目的は?

 監督:映画化の決定後に小説を読ませていただきました。小説を読むまでは、そのような事件があったことを知りませんでした。それは、自分が無関心だったということで、そのような小説はあるとは思っていませんでした。小説を読みながら衝撃を受けましたし、自分にも苦しいものがあり、なかなか読めなかったのです。涙があふれてきて、小説のページが進みませんでした。読み終えて苦しみました。そして、映画化する自信がありませんでしたので、他の監督に・・・と話をしたのです。1ヵ月後に聞いてみると、まだ監督が決まっていないというので、「私がやります」と決心をしました。例えば、この事件が30年、40年位前の古い事件で、関係者や被害者などが亡くなっていたら映画化にすることはなかったと思います。これは5年前位の事件だったので・・・小説になったにもかかわらず、あまりにも世の中の人が知らなかったのです。それで、関係者、被害者を支援してくれた方々が、いろんな努力をしたにもかかわらず、何の解決もされなかったのです。それで、これは自分が映画化することが、世の中に知らせる最後のチャンスなのではないかと思い、映画化することを決心しました。

 

鈴木:映画は実刑にならないところで終わっているのですが・・・なぜ、現実の事件では、罰しきれなかったのですか?

 

弁護士:担当の教師とか4人くらいは、実刑を受けています。でも、その刑罰が軽いもので、一般の人などは知らなかったのです。

 

鈴木:こんなに酷い事件が、なぜ世に広まらなかったのですか?

 

弁護士:法律の不十分な部分もありますし、社会的な認識としても、一般的に強姦罪や暴力犯罪の韓国の人の認識が、低かったのではないかと思います。

 

鈴木:小説を基にしてフィクションにしていく部分があると思うのですが・・・淡々と描くこともできたと思うのですが、非常に人へ感情を訴える作品として、素晴らしいと思いました。それは意識して作られたのですか?

 

監督:小説と映画では違う部分もあります。その中で一番違うのは、クライマックスです。小説の中での主人公は、奥さんに説得されて、クライマックスのデモには参加しないで逃げてしまうのです。そこを映画ではどうしようか悩みました。観客には主人公と同じ気持ちになって観て欲しいと思ったので、主人公が逃げる姿を見せたくなかったので、映画ではデモの現場を見つめて、いろんな街行く人に訴えるところで、観客に訴えるという結末にしたかったのです。

鈴木:美術教師になって(主人公のように)「自分だったらどうしよう、学校で立ち向かえるだろうか・・・」という気持ちで観られたと思います。寮長が洗濯機を回しているシーンや、トイレで校長先生が追いかけてくるシーンで、上から覗くホラー映画のような場面に観せていることろが腹が立つ(笑)・・・でも、この映画はそこが凄いのですよね。ドキュメンタリー的に撮ることもできるのに、監督は本当にむかつく奴を描いてくれている。双子の校長ね・・・。

 

監督:双子の校長の二役をした方は、しばらく家の外に出れなかったそうです。(爆笑)

 

鈴木:日本では少ない館数ですけれど、韓国では大ヒットで、大統領も観たのですよ。「これはけしからん」と法律が変わったのです。具体的に変わった法律は、どこがどう変わったのですか?

 

弁護士:「トガニ法」は2010年4月にできた法律で、そして映画公開後に改正されました。刑罰が重くなりました。特に障害者に対しての性暴力をした場合は、元々は3年以上の懲役が、無期または7年以上の懲役になりました。そして、13歳未満の子供に対しての性暴力は、無期または懲役12年になりました。障害者保護施設や障害者学校の職員が性暴力した場合は、法廷権の二分の一まで加重することができる。7年以上だとしたら14年以上の懲役を罰することができる。

 

 

鈴木:あいつらは(映画に登場した職員などを指す)重い刑を受けているのですか?

 

弁護士:最初は軽い刑を受けていましたが、最近、(映画にも登場している)室長が12年の実刑を受けました。

 

鈴木:映画を作るにあたり、被害者や加害者と話をしましたか?

 

監督:関係者とは会いませんでした。会って知り尽くしてしまうと映画的な演出に邪魔するんじゃないかと思いました。原作者のコン・ジヨンさんが小説を書くために、取材した内容が詰まっていましたので、あえて自分は取材しませんでした。学校を辞めた子供たちを支援していた方々が、5、6年間ずっと闘って、学校の閉鎖などを政府に働きかけていたが、何一つ動かなかった。映画が公開されて2,3ヶ月で、全てが変わりました。支援していた方々は、何も変わらなかったことが、映画が公開されて全てが変わったということは、嬉しい反面・・・非常にほろ苦い思い、自分たちの苦労は何も形にならなかった。韓国社会は正常な社会ではない、正常な方法で、変わって欲しかったという言葉を(支援者から)いただきました。

 

鈴木:大統領が観たから全てが変わったのですか?

 

監督:試写の段階からSNS(Twitterなど)で、いろんな人が書き込んでくれて、それが一つの世論になり国民の声となりました。実際、大統領は何にもしていませんでした。そして、マスコミが政府へ働きかけたのです。結局、国民の声が猛火したのです。

 

鈴木:主演のコン・ユさん。超カッコイイですよね。恋愛ドラマが多かったのに、いきなりこのような映画に出ることのきっかけが、徴兵のときに小説を読んだことがきっかけのようですが?

 

監督:コン・ユさんが小説を読んだのは、軍隊で偶然上司から小説を渡されて読んだのです。所属事務所と相談して、「是非、これを映画化にしたい!」と自分から言ったのです。

 

鈴木:日本でそんな俳優いないですよ。

 

監督:こんなにシリアスな役を演じたのは初めてですね。

 

鈴木:人気俳優が映画化にしたいと作品が公開され、法律を変えてしまうという映画のパワーは、今日本にはないので、素晴らしいと思いました。彼は(コン・ユ)ハートも良いのですか?

 

監督:そうです。(笑)

 

鈴木:顔はいいし、性格もいいし、そりゃあモテルよな・・・。(笑)

 

監督:普通の俳優さんは、気難しかったりするのですが・・・彼(コン・ユ)はそうではありませんでした。

 

鈴木:今後、作りたい作品は?

 

監督:そうですね。自分はデビュー作も実話を基にした作品で、『トガニ 幼き瞳の告発』すので、次の作品では、このような作品は避けたいかなと思います。(笑)

 

鈴木:こういうことが日本で行われていないことを願いたいですし、2000年代にこのようなことがあったということを、Twitterやブログでもたくさん言って、広げて欲しいと思います。あと・・・コン・ユ凄いな!ということを・・・。(爆笑)

 

監督:韓国で酷いことがあったなと留まるだけでなく、似たような事件は世界どこにでもありうるし、起こっていると思います。台湾でもこのような事件があったと聞きましたし・・・。アメリカでもあったと聞きました。日本でも起こる可能性もあります。性的暴力だけでなく、いじめというものも含まれると思います。全て、力を持っているものが、弱者をいじめているというものなので・・・。みなさんは主人公のような視線を持っていただき、自分のまわりで苦しんでいる人がいるかもしれない。そういうことを考えていただきたいと思います。自分のまわりで、そのような事件があったら、勇気を出して手を差し伸べてください。みなさんが、手を差し伸べるような映画になればと思います。

 

(取材:野地 理絵)

 

STORY

郊外の学校に赴任することになった美術教師イノ(コン・ユ)は、ある放課後、寮の指導教員が女子生徒の頭を洗濯機の中に押し付ける光景を目にし生徒をかくまう。その少女は男女複数の生徒が校長を含む教師から性的虐待を受けていることを告げる。幼い娘を持つ彼は、大きな衝撃と憤りを感じこの真実を告発することを決意する。様々な妨害や葛藤がありながらも子供たちと共に法廷に立つイノ。しかし、彼らの前に残酷で理不尽な現実が立ちはだかる・・・ 

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出演:コン・ユ 「コーヒープリンス1号店」『あなたの初恋探します』 チョン・ユミ
監督:ファン・ドンヒョク 原作:孔枝泳(『トガニ幼き瞳の告発』蓮池薫/訳新潮社刊)
2011
/韓国/125/カラー/シネスコ/ドルビーSRD/日本語字幕:根本理恵/原題:トガニ/
提供:CJ Entertainment R-18
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公式HPdogani.jp

8月4日(土)シネマライズ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

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