『コンティジョン』スティーブン・ソダーバーグ監督 来日記者会見

 

<ストーリー>

「トラフィック」「オーシャンズ11」のスティーブン・ソダーバーグ監督が、マリオン・コティヤール、マット・デイモン、ジュード・ロウ、ケイト・ウィンスレットら豪華キャストを迎え、地球規模で新種のウィルスが感染拡大していく恐怖を描いたサスペンス大作。接触感染により数日で命を落とすという強力な新種ウィルスが香港で発生。感染は瞬く間に世界中に拡大していく。見えないウィルスの脅威に人々はパニックに襲われ、その恐怖の中で生き残るための道を探っていく。

 

<キャスト>

マリオン・コティヤール、マット・デイモン、ローレンス・フィッシュバーン、ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロウ、ケイト・ウインスレット、ブライアン・クランストン、ジェニファー・イーリー、サナ・レイサン

 

11月12日 新宿ピカデリー他にて全国ロードショー

 

11月10日(木)、グランドハイアット東京(港区)で映画『コンテイジョン』のスティーブン・ソダーバーグ監督の来日記者会見が行われました。

 

スティーブン・ソダーバーグ監督より挨拶

前回の来日から3年が経ちました。今年3月に日本では大変なことが起こり、この映画を作るにあたって、人間はこのような究極な状況におかれたときにどのように人間として対応するのかということを考えましたので、今3月から少し時間が経って、日本の方達が普通の生活に戻れたらいいなと希望をもって考えています。日本に来るときにこのように考えていました。

 

Q:マット・デイモンさんに脚本を渡したときに、「読んだあと手を洗うように」とメモが書いてあったと伺いました。実際撮影現場では手洗いなどは行われていたのでしょうか。監督自身が日常生活で何か変わったことや意識されていることがあれば教えてください?

 

監督:このような作品に関わって、そのあと全く考えないでいるということは恐らく不可能ではと思います。皆さんもこういう撮影にいた方は触るものには注意するかと思います。私も忘れたわけではありません。東京に来る間、飛行機の中のトイレは最悪だなとも思いましたが、全く考え方を変えたとか握手しないわけではありません。マスクをしているわけではありません。ストーリーとして考えたときに良いなと思ったのは、ドラティックな場合、麻薬は自分で避けようと思えば避けられるが、バイ菌はそうもいかず、そこら中にまん延しているので全員に関係しているというテーマは映画のストーリーとしては良いものだったと思います。

 

Q:主演クラスの俳優、しかもオスカースターということで、夢の共演がピッタリだと思いますが、夢のような凄いキャスティングは、どうやって実現したのでしょうか?これだけの俳優ですと誰にどの役というのが難しかったのでは?

 

監督:今回の映画はアンサンブルということで沢山のキャラクターが出ているのですが、皆さんが関わる時間は非常に短い時間で済むという点が、俳優の方が「参加しても良いよ」と言いやすい状況だったのだと思います。例えばローレンス・フィッシュバーンさんやケイト・ウィンスレットさんも「大体8日間くらい撮影に来てくれれば撮影は済みますよ。」というように申し上げていれば承諾しやすいと思います。ただ、これほど重要な演技が出来る方が作品の中で必要とされていますし、それぞれのキャラクターが多くの情報を持っている役をしている、映画自体が早いスピードですすむということでも考えると観ている方はロープにつかまって、話の中できちんと自分が関連付けて繋がっているということは、やはり演技力がある方がたくさん必要とされたと思っています。映画が始まって100年以上経って、そのときから映画スターはたくさんいますが、今回の作品はスターの方がたくさん必要とされた作品ではないかと思います。

 

Q:この映画にはWHOCDCなど実際の機関が出てきますが、実在の機関を描く上で留意した点や映画には出てこなかったが監督が知り得たエピソードがあれば教えてください?

 

監督:実際機関に調査をしてもの凄い量の情報を得ました。編集していく中で1時間以上のものを削除することになりました。それは何故かというと映画のリズムを加速させてスピーディーにするために外すことになりました。私にとっては興味深い題材であったために、いくつかの映画が作れるようだと考えました。しかし映画を怖くするためにスピードを保つために最終的には編集時にかなり削除することになりました。

 

Q:実際に撮影シーンではどのようなムードで撮影し、その中でも楽しかった撮影場面は?

 

監督:良かったことという例で、ひとつの例を紹介することでどのような形でシーンにアプローチしたか撮影したかがわかるかと思います。たとえば、マッド・デイモンさんの役が集中治療室で医師に「奥さんが亡くなられました。」と告げられるいうシーンがありましたが、なかなかスムーズにいかず、コンサルタントとしてERの医師がいたので聞いたところ、リアクションでは二つ考えられます。一つのタイプは耐えられず興奮してしまうタイプ。もう一つのタイプは亡くなった方と実際お話をしても良いですかとというタイプ。医師はソフトな言い方はしません。「心臓が止まってしまいましたよ」と「お亡くなりましたよ。」というよりもに真実を述べることを訓練されていますので、その情報をシーンに使いました。実際にそういう方と話すことで、このような形で皆さんが何ども目にしたシーンでないものを作り上げることができたのではないかと思います。

 

 

Q:ウィルスの恐ろしさと同時に人間の恐怖心こそが恐ろしいという作品だったと思いますが、監督自身が今社会などで恐ろしいなと思うことがあれば教えてください?

 

監督:映画の内容に関しての怖さからお話すると、今回は人間ではないそして生きているのだけれど説明して説得できない目にも見えないものが敵ということ。人間以外のものを敵にするということが難しい。個人的な恐ろしさは、自分の感覚ですとか自分の感じていることが全部嘘なのかもしれないということがわかった。そしてこれが現実でないのかもしれないというふうに感じたときに私は一番恐怖に感じるのだと思います。映画で言えばロマン・ボランスキー監督とカトリーヌ・ドヌーブ主演の『Repulsion(反撥)』彼女が周りで起こっておっていることが本当なのかどうなのかもわからなくなってしまう。そのようなことが起こったら私にとっても大不安だと思います。

 

Q:グウィネス・パルトロウ演じるベス役がウィルスの犠牲者になり、脳みそがパカッと割れて、それがファンにとってもビックリしたと思うのですけれど、そのときグウィネスさんはそのアイデアに対してどういうリアクションをとったのでしょうか?監督は何と言ったのでしょうか?

 

監督:彼女は非常に胸がドキドキするような経験だとおっしゃっていました。部屋にコンサルタント的な方を居合わせて撮影をしました。「実際にこのような場合どうするのですか」と聞きました。「彼女の皮を切って顔の前の方にに持ってくるのですよ」というようなことをダミーを使い、テーブルに彼女を横にしてデモストをしました。彼女は非常に興味を持って実際に「こういう時は口はどうなっていますか?」「舌は鼻からちょっと見える状態でしょう。鼻からは黄色液体が出てくるでしょう。」ということをずっと聞きながら、撮影に臨みました。髪の毛もフロントの髪の毛を皮のところにつけて、40分くらいの間で質問を聞きながら、彼女自体はテーブルの上で撮影のシーンが終えることができました。アシスタントカメラマンで「プライベート・ライアン」の撮影に望んだ方がこのシーンを見て気持ち悪くなったということを聞いて、これはうまくいってるのかなと思いました。

 

Q:世界は災害や経済などの問題がありまして、混迷を極めていると思うのですが、こういう時代に映画監督としてどういうことを意識して撮ってきたのか?

 

監督:問題を二つに分けて考えないといけないと思うのです。まずひとつは自分が作ってしまった問題とそうじゃない問題。自分が作ってしまった問題というものに直面した場合にフラストレーションを感じると思うのです。3月に大きな災害が起こってしまいました。そのようなことが起こったときに人間として究極な状態に置かれたときに、自分を捨てて何かできるかどうか問われるのだと思うのです。そう言った意味では少なくとも自分が問題を作ってしまっても希望が生まれてくるのだと思うのです。今回の映画『コンテイジョン』の中でのメッセージでは、恐らく私達はパニック状態になって慌てているのだけでは何も解決にはならない。映画の中ではパニックしてもダメなんだ。それが解決にはならないと皆さんは思ったのかもしれません。ローレンス・フィッシュバーンがひとつの例として、他の人に情報をわけ渡す前に自分のフィアンセに情報教えてしまいました。やってはいけないことだったのかもしれませんが、皆さん私も含めてこの部屋にいる方は、全員がそのようにしてしまうのではないかと思います。いろいろな状況において全てひとつの答えが解決になるとは思いません。人生というものは常に何かを模索して、常に質問を投げかけていくことが人生だと思いますので、自分が知識を得て全てが答えられてしまっているのはつまらないことだと思います。映画を作るとしても、そういうふうに答えが全部あるようなものはつまらないと思いますし、退屈になってしまうと思います。

 

 

Q:マット・デイモンをはじめ多くの役者が、ソダーバーグ監督だから出演したとおっしゃっていましたが、監督はどう思うのか?監督のどのようなところに惹かれているのですか?

 

監督:皆さん驚かれるかと思いますが、私はとても俳優さんが好きです。世の中で監督さんの中では俳優さんを好きでない監督もいます。おそらく皆さんの言っていることを聞きますし、作品としてコラボレーションしていけることを皆さんが理解していると思うのです。いろいろな俳優さんから聞くと尊敬されないような口のききかたをしたり、たくさんあると聞いています。私は俳優業ということは自分をさらけ出すということ、ある意味では恐ろしいことだと思うのです。私は俳優さんに敬意を持っています。私と一緒に仕事をしていただくときはここでは安全なのだよと、そして良い経験ができると感じて欲しいです。映画を作って何十年にもなりますので、他の方から耳で伝わると思いますので、お互いに尊重できるような関係を続けられればいいと思います。

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