第24回 東京国際映画祭 受賞者記者会見&コンペティション審査委員記者会見

 

TOYOTA Earth Grand Prix 審査員特別賞、『ハッピー・ピープル タイガで暮らす一年』

ドミトリー・ワシュコフ監督:「受賞理由は審査委員にお尋ねになった方が良いかと思いますが、出品している監督なら誰もが受賞を願っているはずです。私が当初撮ったのは4章から成る長い作品だったのですが、ヴェルナー・ヘツォークが世界公開するためにショートバージョンを作ろうと提案してくれました。私の映画ついて十分に理解してくれいたので、そのディレクションについてもほとんど彼に任せました。」

 

TOYOTA Earth Grand Prix、『鏡は嘘をつかない』

カミーラ・アンディ監督:「受賞できると思っていなかったので、本当に嬉しいです!」

 

日本映画・ある視点作品賞、『ももいろそらを』

小林啓一監督:「このストーリーは、全くのオリジナルです。女子高生を使って世界を斬って行ったら面白いのではと思い作りました。世界を斬るということころは少し薄くなったかもしれませんが、面白い作品に仕上がったと思います。ストーリー的にこんなに膨らませるつもりはなかったのですけどね。この映画を作る時、約束通り祖父にタイトル文字を書いてもらいました。祖父は、今年の5月頃から入退院を繰り返し、手術もしたのですが、残念ながら先月他界しました。この映画は僕にとってとても重要な作品です。」

 

コンペティション最優秀芸術貢献賞、 『転山』

ドゥ・ジャーイー監督「海抜3000 メートル以上の、厳しい寒さと強風といった、過酷な状態での撮影でした。」

 

コンペティション観客賞、 『ガザを飛ぶブタ』

シルヴァン・エスティバル監督:「結局は、人間一個人と動物との関係を描いたので、異文化であっても分かりやすかったのかもしれません。二つの宗教、ユダヤ教とイスラム教では豚を不浄としています。その共通点を通して二つの文化の関係を描こうと思いました。ちなみに使ったブタは、ベトナム豚という種で、あえて黒豚を選びました。黒は恐怖を象徴し、平和の象徴である白い鳩と対照的にしたかったのですね。豚はシャーロットという名前の雌豚だったのですが、雄の役を演じてもらいました。ですからシャーロットに最優秀女優賞をあげたいくらいです。」

ミリアム・テカイアさん(女優):「シャーロットよりは、エスティバル監督との仕事の方が楽でしたよ。コミュニケーションが上手く取れましたからね!(笑)」

 

コンペティション審査員特別賞、 『キツツキと雨』

沖田修一:「二人の主役とは、仕事がしやすかったです。いずれも脚本を気にしてくださっていたので、相談しながら撮影することができました。基本的には自分の経験も反映されていると思いますが、映画の中に出てくる映画監督としては、25歳くらいの監督というのは今までなかったかなと思い、そういう設定にしました。」

コンペティション最優秀監督賞、 リューベン・オストルンド (『プレイ』)

リューベン・オストルンド監督:「受賞のニュースを真っ先に伝えてくれたのは、プロデューサーと、それからスウェーデンで一緒に仕事している友人たちです。このテーマは欧州であれば論議を呼ぶ内容だったので、日本でどのように受けとめられるか興味がありました。特に欧州の植民地経験のある国であれば、物議を醸す題材です。欧州人が持つ優越感といったものも表現しています。」

 

コンペティション国際審査委員

エドワード・R・プレスマン(審査委員長): 「授賞内容につきましては、非常に満足しています。熱い論議を交わした結果ですから。個人的には、『より良き人生』や『デタッチメント』も気に入っています。小林政広さんは、新しい試みがあまり見られないという点で『プレイ』は良かったとおっしゃっていますが、私もその通りだと思います。選択過程で様々な意見が出ました。各自の価値観や基準で評価しました。そういった意味では、監督の視点からすれば小林さんのような評価になるのだと思います。(審査委員は)様々な背景の人たちで構成されていたので、そういった違う視点からの評価、選択ができたと思います。全員が気に入っていたのはやはり『プレイ』でしたが、全体的にコンセンサスを得るのが難しかったことは事実です。最終的には3 つの作品で議論が白熱しました。その中で『キツツキと雨』は東京サクラグランプリには軽過ぎるのではないか、『プレイ』はダーク過ぎるのではということで、『最強のふたり』に決めました。ただ、監督賞については、オストルンド監督にしようということで意見は一致していました。」

 

キース・カサンダーさん:「実は、18 年前も審査委員を務めさせていただきました。その時は、映画祭の規模が小さかったのかもしれませんが、4 つの賞しかなかったように記憶しています。偶然ですが、今回最も人気のあった2 作は、いずれも初日に見た作品でした。まだ時差ボケだった頃ですが、受賞したいなら、映画祭の前半で、できれば午前中に見てもらうべきかもしれませんよ!『最強のふたり』は、編集が巧みで、音楽の使い方も良く、素晴らしかった。最初から最後まで笑わせてくれる、こういったコメディをつくるは難しいと思います。昨今映画館では、芸術性の高い映画がなかなか見ることができなくなっています。でも映画に未来がないわけではありません。インターネットがあるからです。今後は益々インターネットで見たい映画を探して見る、そういった時代になるのだと思います。」

 

ファン・ビンビンさん:「私は隠し事ができないたちなので、今日発表ができて良かったと思っています。どれも質の高い映画ばかりでした。そして受賞式はとても感動的でした。」

 

レイコ・クルックさん:「35 年間映画作りの技術者として参加して参りました。スタッフとして制作者の気持ちをひしひし感じる現場で仕事をしてきましたし、ですから人の映画を審査するという仕事は大変だったのですが・・・でも、終わって見て、私自身の観点、私の映画を見る目に狂いはなかった、良いジャッジができたという安心感を得ることができました。」

 

小林政広さん:「日本人として、隣にクルックさんもいらっしゃいますが、僕だけが映画監督で、選ばれたからには映画をつくる監督の目線で作品を観てきました。15 本あって、あまり刺激的で芸術性に富んだ映画はなかったよな・・・ストーリーはしっかりしていても、芸術性に富むものはひとつくらいしかなかったという印象があります。」

 

尚、今回のクロージングセレモニー(受賞式)に参加していただけなかった受賞者からは、それぞれメッセージが届けられましたので、ご紹介いたします。

 

コンペティション最優秀芸術貢献賞 『デタッチメント』

トニー・ケイ監督からのビデオメッセージ:「そこにいることができなくてごめんなさい。それは私がここにいるからです。とてもクールで芸術的な仕事をし、人間のクリエイティブスキルを最大限に発揮できるようにスタッフ共々努力してできあがった作品です。これは映画を撮っている時に書いた曲で、ヘンリーの気持ちを歌にしたものです」とギター片手に1 曲歌ってくださいました。

 

コンペティション最優秀男優賞、 フランソワ・クリュゼ、 オマール・シー(『最強のふたり』)

フランソワ・クリュゼとオマール・シーからのメッセージが読み上げられました。

オマール・シーからのメッセージ:「私の出演する映画が日本で上映されるのは今回が初めて、コンペティション部門に出品されるのも初めて、そして何よりも最優秀男優賞を受賞するのも初めてです!とっても嬉しいです!アリガトウゴザイマス!日本は私にとって特別な場所になりました。必ず、日本へ行って自分の手でこの賞をいただきに行きます。心から感謝しています。」

 

フランソワ・クリュゼからのメッセージ:「私は俳優になって長いですが、様々な辛いことや楽しいことを経験してきました。このたび、最優秀男優賞を受賞できた事は、私の俳優人生において大変嬉しいことです。東京国際映画祭のような高名な映画祭で素晴らしい賞を頂けたことはとても光栄であり、東京国際映画祭、そしてその審査委員の方々に感謝致します。とにかく、この映画を気に入ってもらえて嬉しいです。そして、二人が東京国際映画祭での「最強のふたり」になれて感激です!」

 

コンペティション最優秀女優賞、グレン・クローズ (『アルバート・ノッブス』)

グレン・クローズさんからのビデオメッセージ:「今ニューヨークです。もう午前2 時なのに、まだ二つシーンが残っているのよ。最優秀女優賞という素晴らしい賞の受賞者として私選んでくださった東京国際映画祭の審査委員の皆様に感謝します。とても光栄です。特にこの役に関しては、映画が完成するまでとても時間がかかりましたから、この作品に関わった大変大勢の人たちのおかげだと思っています。本当にありがとうございます。そこにいられたらと思っています。アリガトウゴザイマス!」

 

 

これをもって9 日間続いた第24 回東京国際映画祭が終幕となりました。

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