映画『金で買えないもの』 単独インタビュー

 

東京国際映画祭のアジアの風部門『金で買えないもの』のビル・イップ監督、主演のマカラ・スピナチャルーン、出演のジラーラット・テーチャシープラサートに単独インタビューをさせていただきました。

 

STORY

二人組の詐欺師がタイ・バンコクを起点に地方を巡回し、ニセ薬を売って回る。富豪に薬を売って金をせしめたまではよかったが、薬を飲んだ富豪が急に倒れたため事態は急転。相方が死ぬ羽目になってしまう。一人になった主人公ニューは、その後もタイ北部の旅を続け、丘陵地帯にある故郷に帰っていく。全編タイのロケで、スタッフ、キャストの大半をタイ人が占める新感覚の香港映画。

 

ビル・イップ監督は、20年間香港の映像業界に身を置き、助監督、脚本家、プロダクションマネージャーなどさまざまな役職に就いた。本作は初監督作品である。「脚本なし、役者なし、芸術的な方向なし、劇作の参考にするものなし。これでどうやっていい映画を作れって言うんだ?」と監督は当初嘆いていたそうで、かなり低予算のインディーズ製作だったが、そんなことを感じさせない見事な見栄えとなっている。

 

<インタビュー>

 

Q:物語が3つのパート(エリック兄貴、サラとの出会い、ホテルの娘プーとの出会い)に分かれていますが、この3つのパートをいかに組み合わせて物語を作ったのか。何故この3つのパートにこだわったのか?

 

監督:実は最初は具体的な脚本はなかったのです。主人公のニューをいかに表せるかを取りながら考えました。主人公ニューはこの過程(旅)で成長していき、自分の中で価値を見出すように考えていました。そして、撮りながら次はサラを登場させようか。と流れのままに仕上がったのです。

 

Q:脚本がなかった作品とは思えないくらいに、胸にくるものがありましたが?

 

監督:人間には情というものがあります。この作品では、エリック兄貴との友情、サラとの親子に近い親子の情、そして愛情です。この3つの情を絡めて情というものを表しました。ラストでは故郷に替えるシーンがありますが、あまりにも持つの母という設定では直接過ぎるので、孤児院の院長という設定にしてみたのです。撮影ではこの3つの情を全て網羅できたように思いました。

 

Q:サラ役のジラーラットさんへ ニューが目覚めたら手足を縛られて、ニューを息子のように妄想したり、不思議な女性を演じましたが、演技で大変だったことはありますか?

 

ジラーラット:自分としては演じる上で、愛情をニューに与えてニューが他人から好かれるように母親としての情。でも、ニューがサラから離れようとすることが不安で仕方がない。息子と言っていたニューが去って離れることが、母としての一番辛いところです。

 

Q:ニュー役のマカラさんは、実物を見るととても優しそうに見えるのですが、役柄ではワイルドな面もあり、男らしさを感じましたが、演技の上で大変で苦労したところは?

 

マカラ:実はそんなに優しくないクールな人間なのですね。撮影場所は非常にリアルな場所とストーリーでしたので、自分としては素直にこの役ならこのようにとスムーズに出たので、監督におかげですね。

監督:今回の撮影は今までと違った撮り方をしました。状況を説明してニューとエリックとバラバラに芝居について説明し、特にニュー役は新人俳優でしたので、演技とかもうまくできない分、自然さを重要に撮るようにしました。でも、最初ニューは嫌がっていたシーンもあったのですよ。

  

 

Q:サラに手足を縛られて、可愛い絵のパンツをはかされるシーンがあったのですが、どんな気持ちでしたか?

 

マカラ:幸いにもパンツを貰えるだけでも良かったです。あれがパンツも取られてしまったら泣きますよ。(可愛い下着の話に、ちょっと照れながら話すマカラ)

 

 

Q:ニューの運転する車の前後に、天使の飾りがありあの天使が意味するものは、重要かと思ったのですが?

 

監督:人は最初は善でしたが、何かの状況などで人によって環境によって悪いことをしたり、でも、タイも仏教の思想の中で人は良いことをしたほうが気持ちがいい。だから車の前と後ろに天使の飾りを置いて、前に進むのも良い、できるなら振り返ってもいいけれど自分が良いことをしてきたのだという意味で天使なのです。だから車の前と後ろに天使の飾り物を置いていたわけなのです。

 

短い時間でしたがこの作品で重要な3つの情などのお話を伺うことができ、そしてタイで撮影した香港映画ということ。そして、個人的にも気になっていた俳優のマカラさんと女優のジラーラットさんに会えたこと。当初、予定では来日しないと伺っていましたので、とても貴重な時間でした。そして、今後の活躍を期待したいと思いました。

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